缶詰雑学

シュールストロミング

 缶詰といえば、シュールストロミングに触れないわけにはいかないだろう。世界で一番臭い缶詰といわれる、スウェーデンの特産品であります。

 中身はにしんを発酵させたものだ。春先に獲れる小さなにしんの、頭と内臓を取ってきれいに洗い(内臓ごと使うものもある)、塩水に浸したあとで樽に重ねていく。その作り方は、まるで日本の漬け物のようである。樽がいっぱいになったらフタをして、冷暗所に数カ月置いておく。やがてにしんは発酵して強烈な匂いを放ち、盛んに二酸化炭素を出し始める。

 この、発酵した状態で缶に詰め、フタを密封したのがシュールストロミング。通常、缶詰と言えば、密封したあと加熱殺菌が施されるのだが、シュールストロミングはそれをしない。殺菌されてないから、にしんに棲みついた菌類(主に乳酸菌)は生きたままである。しかし突然、密封されて空気を遮断されてしまうので、菌類は嫌気発酵という異常な代謝を始める。これが悪臭のもとになるわけであります。それは硫化水素、アンモニアなどを含んでいて、端的に申せば食べ物と対極の物、すなわちお尻のほうから出てくる物の匂いがする。それも、ダイレクトにそのものではなく、発酵した匂いなのだからたまらない。また硫化水素はガスの刺激臭もあるので、鼻先にくると涙が出そうなくらいツンツンする。おまけに二酸化炭素もずっと出し続けているので、飲み込んだあとも、胃からさかんにゲップが上がってくる。それが悪臭なのだからまさに最悪。僕はくさやも鮒寿司も大好きだが、シュールストロミングだけは苦手である。

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